【読書のメモ】オーデュボンの祈り

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基本情報

【作品名】 オーデュボンの祈り
【著者】 伊坂幸太郎
【初版発行】 2000年12月 (第5回新潮ミステリー倶楽部賞)
【ジャンル】 サスペンス・スリラー・推理小説

あらすじ

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

感想

伊坂幸太郎氏の名前を見て古本屋で購入。特にファンではなく、伊坂作品を読むのは久しぶり。

読み始めは奇を衒った設定のSF小説のように感じるが、そういったファンタジー的要素の仕組みなども読み進めるごとに丁寧に明かされてゆき、超常現象という言葉に頼らない。全体的にリアリティを感じさせるような仕掛けを感じることができて、読者的には丁寧に扱われているような好感があった。
本を読む時、設定に置いていかれないということは自然と求められるけれど、そんなに簡単ではないのだろうと思わざるを得ないような作品も多々あるし。

島に来て過ごす間に変化してゆく主人公の心理描写・島民それぞれの生い立ちから来る思考回路などが自然かつ詳細に散りばめられているので、特殊設定ながらもに世界観にストレスなく入り込むことができた。
連続殺人事件が起きているのにも関わらず、小説全編を通して淡く浮世離れした雰囲気を常に保ったままテンポよく物語が進んでゆく。
映像化されたものは見ていないが、絵になるだろうと思われるシーンがとても多く、伏線回収も一気に行われるので映画向き、映像映えする原作だろうなと思う(余談だけど、作家は映像化を意識した作品作りをしたりするのかなと思うことがある)。

文章には、伊坂幸太郎ってこんな感じだったかな?と思う程度の荒さがあると思ったらデビュー作で驚いた。
読みやすさ・読み応え・読後感の場バランスがよいので人にもおすすめしやすい一方、個人的にはラストの重要な「島に欠けているもの」の結果には少し違和感。全編にどことなく滲む優しさ、甘さ、かわいさみたいな成分は敢えてなのか、作品が若いからなのかわからないけど(私は後者だと思うし、そうあってほしい)、「伊坂幸太郎だしそれがいいか」みたいな風に思ってしまうのは20年以上経った今読むからなのかなと思ったりもする。

おまけ 伊坂幸太郎の小説の特徴メモ

・チャプターに絵柄が使われる。
・悪人は大抵救いようがない「すごく悪いやつ」で、こてんぱんにしてくれるので救われる(スッキリする)。そういう意味での裏切らなさがある作風。ミステリー・サスペンス系ではさわやか。

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